弘前の子供たちへ伝えたい…

「弘前ねぷた」
 
 今、少年犯罪の増加が社会間題となっており「心の教育」の重要性が問われて
います。昨今の子供たちを取り巻く環境をみると、学業重視で遊ぶ時問もないよ
うな気がします。この傾向は都会に多いという印象を受けますが、こうしたスト
レスや心のゆとりのなさが間違ったはけ口に流れ、さまざまな問題を引き起こし
ているのではないかと思えてなりません。これは子供たちだけに限らず大人社会
でも同じ事がいえます。
 青森県にはこれらの間題を吸収できる祭りや郷土芸能が多く、その中において
も弘前ねぷたは、老若男女が一同に会して参加できる代表的な祭りであると言え
ます。幸いなことに私どもの町会にも古くから受け継がれてきたねぷたがあり、
ねぷたに携わっている人たちは祭りの期間中だけでなく、一年を通じての交流が
あります。
 ねぷたに真剣に取り組んでいる仲問達だからこそ、時には厳しい意見をぶつけ
合うこともありますが、そのことによって「茂新ねぷた」は成長し、また、それ
以上に意見をぶつけ合った個人個人が大きく成長するのです。
 このたび記念誌の執筆にあたり、取材を通じて多くの方々から感じたことは、
新しい物を取り入れたり、作ったりすることも大変であるけれど、伝統や技を守
っていくことのほうがもっと大変なのではないかということです。
 この記念誌の発刊に微カながら協カできたことは、最高に誇らしいことであり
幸せなことですが、同時に、町内の青少年の健全青成と町民を始めとした多くの
関係者が和合するための材料になれば幸いです。

平成十年九月吉日

〜平成10年9月発行『茂森新町ねぷた同好会25周年記念誌』編集後記から (しゃみケン参画)

 
 今年も短い夏に燃えた弘前ねぷた祭り。私が3歳の時から続いている、我が
茂森新町ねぷた同好会は、今年で24年連続の出陣。とても充実した。
 まだ小学生の頃は8月が近づくと友達と一緒にねぷた小屋へ通ったし、公民
館での笛の講習会では町内のお兄さんたちに可愛がられ、毎年夏休み「ねぷた」
が楽しみだった。
 現在同好会の役員で囃子方の担当の私は、3年連続の知事賞を目指し雪解け
の頃から笛の練習スケジュールを組んでいた。6月末から、ご近所の迷惑にな
らないように太鼓を使わずに少しずつ、町内の子供たちに精一杯教えた。昔、
私に教えてくれたお兄さんたちのように・・・。
 今年は、7月に東京の「うえの夏まつり」に招待され、子供たちと一緒に大
都会の夜空に弘前のねぷた囃子を響かせてきた。早期練習の成果が活かせてと
ても楽しかった。本番の弘前ねぷたでは、ねぷたが回転して観客の拍手を浴び
ている時は感激と嬉しさのあまり、涙が浮かんで見送り絵の姿もにじんでしま
った。
 20年も経って、こうして少年時代と同じ気持ちで祭りに参加できる自分は
本当に幸せである。また、こう感じさせるのが他の祭りにはないところだと思
う。少しでも「ねぷた離れ」がゼロに近づくように、この楽しさ、この大切な
伝統を、これから大人になっていく子供たちに伝えていきたい。
 これこそ、現代の子供たちにとって必要なものの一つだと感じている。
 

〜平成9年9月 陸奥新報 『やまびこ』 掲載文から (しゃみケン投稿)

 

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